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「カクレンボ」OVA発売記念・YAMATOWORKSインタビュー

MZTVでも、好評を博しているYAMATOWORKSの『カクレンボ』。この作品のDVD発売を記念してYAMATOWORKSのお二人に直撃インタビューを行ったぞ!

この度はDVD発売おめでとうございます!今のお気持ちはいかがですか?

森田:
ほんとに待ちに待った瞬間ですね。なにやら血が騒ぎました(笑)すでに見ていただいた方々、これから手にとっていただく方々、本当にありがとうございます!
桟敷:
正直、まだあまり実感がありませんが、店頭で見たときはようやく出たんだなぁと感慨深かったです。特典映像にはCG解説も入ってますので、自分でCGやっておられる方には、参考になるかも知れませんね。

森田監督も桟敷さんも、今まで神風動画やスタジオ4℃などで活動されてきましたが、今回「YAMATOWORKS」を立ち上げたいきさつを教えてください。
森田:
僕は今まで仕事で1分位のショートムービーを作り続けてきたのですが、もう少し長い、オリジナルの作品を作りたいという想いがずっとありました。そんな折、コミックス・ウェーブと出会ったんです。コミックス・ウェーブは「ほしのこえ」や「雲のむこう~」の新海監督のプロデュース・マネージメントをしてる会社で、ちょうど新海さんの活躍もあって、個人や少人数でオリジナル作品を作りたいと思っている人たちを、支援しようというプロジェクトを立ち上げた時だったんですね。
それで、僕らが神風動画時代に作っていた作品を、気に入ってくださって声をかけて頂きまして。これは信頼して一緒に作品作りが出来るかなと思いました。そこでまず僕は、オリジナル作品を作るスタートとして「チーム」を作りたいと思ったんですね。そしてさらには「これからずっと作品を作り続けていくチーム」が欲しいと考えて「YAMATOWORKS」を立ち上げました。
桟敷:
僕は当時(2003年)「神風動画」で働いていた時に、森田君から、「YAMATOWORKS」立ち上げの話を聞いたんです。新しいことが出来そうだしオリジナルの仕事というのは楽しそうなので、一緒にやろうと思いました。
森田:
オリジナルを作ることが決まってからは、作品をどうするか?何を作るか?話し合い、僕らが一番作りたいものということで、日本の昔話や妖怪モノをアニメにする企画を練りました。そこからは、コミックス・ウェーブのプロデューサーにも入ってもらって作品のプロット、脚本と、進めていきました。コミックス・ウェーブでは僕らのような個人制作や、自主制作のようなインディーズ的商業作品をプロデュース・マネージメントして、自社のレーベルで発売するというノウハウを持っていたので、僕らとしては心強かったです。

お二人にとって、初のオリジナル作品ということになりますが、この作品はどのようにして作られていったんですか?
森田:
日本の昔話や民話や妖怪をモチーフにした作品を作ろうと、昔話や妖怪などを調べていくうちに『カクレンボ』の冒頭でも紹介した「夜隠れんぼすると鬼に連れていかれる」という柳田国男さんの文章を見つけました。昔話というのは、夜や闇を恐れていたものが多いんですね。でも最近では、夜でもネオンですごく明るくて、子供が塾とか外を出歩いている。そこで今、こういう昔話をもってくれば面白そうだなぁと思いました。
最初は自分で、ある程度オリジナルのストーリーを考えていたのですが、妖怪の事を調べているうちに、脚本を手伝ってもらっている黒史郎さんと出会いました。黒史郎さんは妖怪や日本の民話を、ずっと研究されていた方なんですが僕とすごく話が合い、コミュニケーションをとっているうちに『カクレンボ』という話が段々と浮かんできました。
桟敷:
僕はキャラクターデザイン、世界観設定、美術、レイアウトを担当したのですが、この作品の世界観に関しては森田君から 「廃墟や九龍城、そういうものに和風とネオンをプラスしたい」というオーダーがありました。それを聞いたときには、自分ではちょっと想像つかないし、絵を起こすのも大変そうだなぁと思いました。キャラクターは一目で性格が分かるような、デザインを、心がけました。主人公の「ヒコラ」は、主人公らしく 「赤」の服を着せ髪の毛も立たせて分かり易くしたり、「ノシガ」は悪ガキっぽく、デブで黄色いジャケットを着せて踏ん反りかえったイメージにしたり。 「インム」「ヤンク」も白目と黒目を反転させて赤い瞳にして不気味な感じに仕上げようと工夫しました。

森田:
通常のアニメでは、脚本をベースにキャラクターデザインや美術設定をしていくんですが、今回は脚本とキャラクターデザインを同時で進めていったんです。

「鬼の設定デザイン」桟敷:
そうですね。黒史郎さんにラフの脚本を上げてもらった段階で、僕の方でキャラクターデザインをおこして、そこからまた名前やキャラの性格をストーリーの中で展開して。脚本とキャラクターデザインが、お互い感化されながら作っていく作業ができてこれは面白かったですね。鬼の設定の場合は、黒史郎さんから原案のようなものが上がってきて、それに自分がプラスして描いていきました。中でも「肝取」という 一番人間に近い形の鬼がなかなか自分的に納得いくものがあがらず、苦労しました。なんといっても8人のキャラクターに鬼が4体ですから、キャラクター設定もそれに合わせた美術設定もかなり大変な作業で、部屋中、紙だらけでした(笑)

それぞれの担当する立場から、頻繁にキャッチボールを繰り返してお話作りも設定作りもふくらんでいった感じなんですね。
森田:
少人数で制作したから、すごいというわけではないんですが、カクレンボに関しては、少人数だからこそできた、面白さというのが出せたと思います。一番大きな違いは、コミュニケーションがすごく良くとれる事です。それによって、新しい表現や制作方法が模索できるし、実験するにも挑戦しやすいんです。それは、こうした脚本部分や設定部分だけではなくて、実際の映像制作の面でも活かされているんですよ。

この作品を見て、ブレードランナーやマトリックスを感じさせる部分や、歌舞伎の演出に近い部分もあるようにも感じました。
森田:
そうですね。ブレードランナーは子供のころすごく好きになった作品ですし、最初に「想像した世界を自分でも作りたい」と思わせてくれた、僕がこの道を歩むきっかけになった映作品でもあるので、影響はあると思います。そして、最近歌舞伎を何回か見る機会があったんですが、色艶やかなところや、演技の強弱がはっきりしているところなど、非常に良い参考になりましたね。

また、非常に精密で美しい背景の数々に目を奪われますが、よく見ていくと、実は単に美しいだけでなく、背景にはたくさんの遊び心が入っていることに気づきます。
桟敷:
街の中にはたくさんの張り紙が貼られているのですが、この張り紙の絵作りを作業が苦しいときの息抜きにして遊んでいました。脚本の黒さんから頂いたテキストから、面白そうな言葉を選んでそれをポスターにする感じで描いたり、他にも幻の珍獣・アマ○ンとか、映画ネタのパロディチックなものも描きました。それがそのまま使われているのが怖いです(笑)